「チャレンジ」 先駆者が歩む会計士キャリア Vol.1

「チャレンジ」 先駆者が歩む会計士キャリア Vol.1

コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社 執行役員 
トランスフォーメーションプロジェクトリーダー 青山朝子氏(公認会計士)

今回は特別企画!弊社代表の石田が、コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社で執行役員を務める青山朝子氏にインタビューを行いました。大学在学中に会計士試験に合格した後、有限責任監査法人トーマツに入所。アメリカで2年間ビジネススクールに通い、投資銀行を経て現職に就いた青山氏。そのキャリアはどのような想いで形成されていったのか。多様な経験をしたからこそ伝えたい、若手会計士へのメッセージとは。全2回でお届けします。

監査以外にどんな付加価値がつけられるのか
石田 本日はお忙しいところ、ありがとうございます。今回は若手会計士のキャリア形成の参考になるお話を伺えればと思っていますが、私も会計士資格を持つ身なのでタメになるお話が聞けると思って今日をずっと楽しみにしていました。よろしくお願いいたします。

青山 なんだかプレッシャーを感じますね(笑)。参考になるような話ができるかわかりませんが、こちらこそよろしくお願いします。

石田 それでは早速ですが、青山さんは何故会計士を目指そうと思われたんですか?

青山 私が大学生の頃は、女性は一般職に就職することがほとんどでした。仕事内容も簡単な事務仕事やお茶くみばかり任されるようなイメージ。それは、ちょっとつまらなさそうだなと。もっと将来につながる専門的な仕事をしたいと思って資格取得を目指したのが、きっかけですね。それで、どうせだったら最難関資格の方がいいなぁと思って、じゃあ会計士になろう、と。

石田 明確に何かやりたいことがあって、というわけではなかったんですね。ちょっと意外です。そうなると、会計士試験に合格してからどこで働くか決めるのは迷われたんじゃないですか?

青山 それが迷いませんでした。というより、迷えなかったという方が正しいですね。当時は会計士業界も就職氷河期で、合格しても監査法人には入れない人も多くて。でも、今もそうだと思いますが、最初はとりあえず監査法人に入るのが王道、みたいな空気がありました。だから、監査法人からオファーをいただいた瞬間に「ありがとうございます!よろしくお願いします!」と、一も二もなく入所を決めたのを覚えています。

石田 そのオファーをくれたのが、青山さんの場合はトーマツだったんですね。私も同じトーマツ出身という縁で今日この場を設けてもらえたので、その人事には感謝です(笑)。トーマツでのお仕事は、国内監査がメインですか?

青山 そうです。国内監査をずっとやっていて、大手クライアントの子会社をたくさん担当しました。本当は大手企業を担当してみたかったのですが、入所したときにはすでに枠が残っていませんでした。私は在学中に試験に受かったので、4月入所。その前に同期が入所して、大手クライアントを全部持っていかれました(笑)。

石田 それは残念ですね...。大手を担当したいということ以外で、こんな仕事がしたいという希望やキャリアイメージは持っていたんですか?

青山 それが、全くありませんでした(笑)。でも、このままじゃまずいかもしれない、とは思っていましたね。正直な話、監査法人に入るまでは、会計士になってしまえば、あとはバラ色の未来が待っているはずだと思っていました。でも、もちろんそんなことはなくて。同期も当然同じ会計士だし、しかも大手クライアントを任されてどんどん経験を積んで成長していく。このままで、自分は生き残っていけるのかと漠然とした不安を抱えていました。

石田 その不安が、MBA取得のきっかけだったんでしょうか?

青山 それもあります。会計士以外のスキルを身につけないと、周りと差別化できないなという思いはたしかにありました。でも、MBAを取得した大きな理由がもう一つあって、『自ら事業に携わる仕事をしたい』という想いがありました。監査法人の仕事は、基本的にクライアントが行った結果を監査するもの。どう判断して、監査したところで結果は変えられないところに無力感を覚えていました。

石田 なるほど。そこで、事業を行う側にいくためには監査以外のスキルが必要だということでMBAを取得したと。

青山 おっしゃる通りです。監査以外で自分にできることは何なのか、どんな付加価値をつけられるのか。それを求めて2年間、アメリカのビジネススクールに通いました。

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ビジネスのいたるところで会計の知見は活かせる

石田 行動力がずば抜けてますよね。私も監査法人にいたのでわかるんですが、会計士って良くも悪くも保守的な人が多いじゃないですか。仕事自体がミスの許されないものなので、仕方のない部分もあるとは思いますが。そんな中で、こうした行動が起こせるのは、本当にすごい。

青山 行動力はある方だと思います(笑)。でも、MBAをとった後のことは特に考えていませんでした。きっと、会計の知識を活かせる仕事がどこかにあるだろうと。

石田 それもすごいですよね。何かしら次の当てがあるならともかく、それもないのに飛び込む勇気。私も見習いたいと思います。そして、次のキャリアの場を投資銀行に移されたわけですが、これはどんな経緯だったんですか?

青山 当時は、ビジネススクールを卒業したら、戦略コンサルティングに行くか、投資銀行に行くのが王道でした。まだやりたいことも明確に見えていなかったですし、監査法人に入ったときと同じように、周りの流れに乗った形ですね。

石田 戦略コンサルティングではなく、投資銀行にした理由は?

青山 投資銀行の方が、より強く来て欲しいと言っていただけたからです。会計士としての5年間のキャリアを高く評価してもらえたようでした。それだけ求められるというのは、やはり嬉しかった。それに、会計士のキャリアを評価してもらえたということは、会計のスキルが活かせるだろうとも思いました。

石田 そうなんですね。個人的には、マネジメントコンサルティングでも会計のスキルは活かせたような気もします。例えば、あるビジネスオポチュニティーを実際に具現化したら、これだけの利益になる、みたいな提案では会計の知識が役立ちそうかなと。

青山 その通りだと思います。ただ、当時はそれがわからなかったので、明らかに親和性があるだろうと思われる投資銀行に行くことにしました。でも、次のキャリアに迷われている会計士の方に言わせていただけるのであれば、どの道に進んでも会計の知見は活かせる。これは間違いありません。そもそも、ビジネスと会計は切っても切り離せないものですから。

石田 私もそう思います。今は監査法人を辞めて、自分の会社を経営していますが、会計士時代に学んだ知識に助けられることはよくあります。話が少し逸れてしまいましたが、投資銀行でのお仕事は、想像していたものと比較してどうでしたか?

青山 楽しかったですし、会計のスキルも存分に活かすことができましたし、経営陣と会社の存亡について議論することも出来ました。その点では想像通りでしたね。一方で、フラストレーションを抱えていたのも事実です。投資銀行ではM&Aのアドバイザリー業務に従事していましたが、最終的に決断を下すのはクライアントであり、アドバイザーは最終的な意思決定をすることが出来ない。当たり前ですけど、そこに不満を覚えるようになっていきました。

石田 MBAの取得を目指された時と同じ葛藤ですね。事業を行う側へいきたい。意思決定を行う主体者でありたい。

青山 そうです。それで、事業会社へいこうと。どうせ事業会社にいくのであれば、自分が消費者の1人として、普段接するモノを扱う会社がいいと思っていました。合わせて、強いブランド力があって、グローバルに展開している企業が希望でした。そんなことを考えているときに、ちょうど声をかけて下さったのが日本コカ・コーラで、即入社を決めました。

石田 運命ですね(笑)。でも、青山さんの場合はただの偶然ではないような気がします。自分の気持ちに素直になって、勇気を持って一歩踏み出し続ける。そうすることで、そうした縁を自ら呼び寄せている印象を受けました。


自分の中に芽生えた小さな不満を無視することなく、常に前へ進み続ける青山氏の経験は、どれも参考になるものばかり。とても1回では届けきれない濃密な内容でしたので、続きは次回とさせていただきます。次回は、現会社では立ちはだかる壁。そこにどう挑んだのか。また後輩の会計士へのメッセージもいただきました。将来のキャリアに悩む会計士の皆さん、要チェックです!

vol.2へ続く


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Profile
青山朝子(あおやまあさこ)
岡山県出身
国際基督教大学教養学部社会科学科卒業
有限責任監査法人トーマツ
メリルリンチ日本証券株式会社
日本コカ・コーラ株式会社
東京コカ・コーラボトリング株式会社
コカ・コーライーストジャパン株式会社
コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社
執行役員 トランスフォーメーションプロジェクトリーダー


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